ぼん会企画

俳優、ダンサー、音楽家などのアーティストが、民俗芸能をリサーチし、自身の作品作りに結び付ける活動です

【リサーチ合宿】種取祭りレポート

竹富島を訪れてから2ヶ月ほどたつ。

まだあの島の景色は昨日のことのように 鮮明に脳裏に焼きついている。

まず島に降り立って僕らを出迎えてくれたのは水牛と牛車に乗って 島をガイドしている人の弾く三線の音色だった。まさに沖縄。

コレだよこれ。と つい口に出してひとり呟いてしまいそうになるほど 写真や映像でみた そのままの沖縄が目の前に広がっていた。

 

着いてからしばらく島の中を散策した。 沖縄にまず海は見たい 海の美しさに触れたいと思い レンタルサイクルで自転車を借りて海を目指した。

レンタルサイクルや食堂、旅館、お土産屋と観光客のための施設が充実しまくっていた。 しかしそこは少し残念にも思ったところだった。 島のリアルな暮らしというのが見えてこないのだ。 ネイティブな島の生活はどうなってしまったのだろう。 観光業においやられてしまったのだろうか。

 

島を散策していると リゾートホテル建設反対の看板がいくつかあった。 ならぬ。ならぬ。ならぬ。 と大きな文字で書かれていた。 海は青く透明な澄んだ映画で見たあの沖縄の海だった。 鎌倉の海なんかで感じる しおの香りはあまり感じられなかったと思う。 島の植物も独特で 南国の以前、東南アジアで見た 根っこがぐにゃりとせり出した あの植物たち。 ハイビスカスの原色に真っ青な空のコントラスト。照りつける太陽。 素晴らしい。沖縄来たなあと実感するのだ。

 

月の光がまぶしくらいに感じられた 竹富島での夜、 芸能の前日稽古を見た。 村の人たちが集会所に一同に会し 本番さながらの踊りや演奏をしていた。 島の集会所で自然と行われている 芸能稽古。

そしてこの場、状況に身を置いていると 不思議と昔からよく知っているものを 見ているような そんな気持ちにもなってきた。 琉球の芸能とは そんな懐かしさのようなものも思い起こさせるのだろうか。 竹富島での2日目の夜 世乞という儀式に参加させてもらったことは とても印象に残っている。

 

おじい、おばあたちが月の輝く夜中に竹富島の各家を神様と一緒に回って練り歩く。

家の庭で男女にわかれて皆で歌の掛け合いをする姿は 月夜の海によせては返す波を想わせて本当に美しかった。

 

また なんと言っても年配の方達が自信にあふれて 誇りを持っている佇まいには 圧倒されたし はちまきの巻き方一つとっても とてもかっこいい。

こういった儀式が大切にされていることが 良き人間形成 良き家族 良き村や島に 繋がってくるんじゃないかなと感じたのだった。 この先もこういったものは 続いていってほしいし 受け取った僕らも 都市の生活に持ち帰ったときに いろいろな場面であのときのことを 思い出したりできたらいいと思う。

 

それは具体的ななにかではないんだけど きっとよき人生の方向性を指し示してくれるものだと思う。

 

 
 
 
 



 
 
 
 
 
 

【リサーチ合宿】種取祭りレポート 斉藤説成

11/25昼少し前竹富島に上陸。天気は快晴、思ったより暑い。

 

竹富島

 

 

 

すでに世持御嶽の舞台では奉納芸能が始まっている。足早に会場へ向かう。ギャラリーいっぱい。

ちょうど「みるく」一行が祈りを捧げている最中。

みるく面はかつて石垣島でお土産に購入し自分も持っているが実際儀式で使われている姿は初見、とても神々しい。

一行は敷地内のお宮へ移動しそこでまた神事。それと関係なく舞台では別の奉納芸能が進行する。

みるくの面はお宮に納められ守り神の如く鎮座し微笑んでいる。

 

ご祝儀を渡す受付は舞台裏の楽屋隣りにあって(楽屋見えちゃっていいの?と驚く)そこで大きなお弁当を受け取る。

ニンニクの漬物が入っていて臭いキツイ。このニンニク、お祭りに寄ってくる魔物や低級霊を避ける効果があるのだとか。

奉納芸能は踊りあり狂言風寸劇あり歌舞伎風の長編ありとバラエティー豊か。

演者は皆真剣そのもの。正直もっとくだけた土着的芸能を予想してたのだけど、洗練された優雅なものでびっくり。

が少々洗練され過ぎていてかしこまった劇場で観てる気分、ライブ感は少ないかも。

 

庭の芸能

舞台芸能


 

舞台芸能

 

 

初心者の眼には、似たような踊りも多く途中飽きて抜け出し島を散策。

サンゴ砂の白、空と海の青、花々の赤・・・原色のまばゆい世界が広がる。

西桟橋は引き潮で水面が間近、そこにはコバルト色の魚たち。

 

戻ってまた舞台を最後まで見る。

宿での夕食後「世乞い」に参加。各家を回っての神事。

独特の神歌は素朴ながら重々しい。庭での歌の掛け合い等賑やかな部分もあるものの概ね静かで厳か。

神様や祖霊に拝礼の後、泡盛や塩が回されその後タコとあのニンニク。それから皆で神歌、歌詞の本が手元にあってもどうにも難しくて歌えない。

全て終わるとまた行列つくり次の家へ、これを繰り返す。

 

狭い地域ながら一旦はぐれると見つけるの困難、意外と静かなお祭り。

ずっとついて歩くのにも疲れ一旦宿に戻りしばし休息、深夜にまた世乞に合流すべく探して歩く。

途中ここかな?と覗いた家は既に一行が去った後だったが、一族で水入らずの記念写真撮ってて何か微笑ましかった。

やっと見つけた場所は公民館?な広い施設。そこでの儀式がつつがなく進行し終わった時、長老が「ここで少し余興やろう」と一言。

急遽昼間見た「鍛冶工」を演じ始める。持ち物は傘やジョウロやお好み焼きのヘラなどとにかく有り合わせ。

「本番より巧いじゃないか」の掛け声が飛ぶ。皆とても楽しそう。

見上げるとこうこうと満月が天頂に輝く。

翌26日は早朝5時半最初の神事、薄暗がりの中厳粛な雰囲気。終わると出てくるタコとニンニク。「あぅ早朝からこれ?」。

午前中は庭の芸能。日差しがとても暑い。でも躍動感いっぱいな群舞。男も女も元気いっぱいに踊る、跳ねる。

午後はまた舞台で奉納芸能。組踊「父子忠臣」は中々の大作。歌舞伎みたいで見ごたえ十分。

 

また島を散策。安里屋クヤマの生家やお墓に行く。遠くから漏れ聞こえて来るお祭りの歌に囃子。奉納芸能は続く。

帰りの飛行機の心配もあり少し早めに切り上げ港へ。

船はあっという間に島を離れ石垣島へ。

また来たいな。でも石垣島のお祭りも西表島のお祭りも面白そう。

興味はつきない。

 

 

 


--writer--

斉藤説成

僧侶・占術家・ダンサー。大正大学仏教学部卒。群馬県在住。自性寺住職。

迦l陵頻伽声明研究会にて真言豊山声明を研鑽。国立劇場を始めとして国内外で公演活動を行う。

参加CD「阿吽の音」「存亡の秋」「大般若転読会」など。